MSIの裏配線ケースにASUSの裏配線マザーを入れてみた

 MSIの裏配線規格、「Project Zero」。ASUSの裏配線規格、「BTF(Back-To-the-Future)」。これらを組み合わせて使うことはできるのか、人柱となり検証してい行きます。


裏配線規格とは

昨年ごろから、メーカー各社が様々な裏配線製品を発売しています。これは、マザーボードのコネクタ類を背面側に実装することで、配線をケース裏側で完結させ、見た目をよくするものです。ただし、マザーボード背面にコネクタがある以上、それを搭載できるケースは対応製品のみであり、その選択肢もかなり限られます。そもそもの対応マザーボードもかなり少ない...

MSI Project Zero

2024年4月中旬に日本最速でリリースされた、MSI主導の裏配線規格。マザーボードは現在国内2製品。

自作PCに新風を巻き起こすMSI PROJECT ZEROシリーズ


ASUS BTF(Back-To-the-Future)

同年4月末にリリースされた ASUS主導の裏配線規格。裏配線マザーに加え、Advanced-BTFと呼ばれる、グラフィックボードの電源コネクタをも隠す拡張規格も存在。マザーボードは現在国内4製品、グラフィックボードは2製品。

btf-hidden-connector-design | ASUS 日本


GIGABYTE STEALTH

2022年頃に「PROJECT STEALTH」という同様のコンセプトを持った完成品PCを発売したものの、パーツとしての販売は2024年8月と三番手。マザーボードを固定するネジ穴すら隠す徹底ぶりが特徴。マザーボードは現在国内1製品のみ。

PROJECT STEALTH|AORUS - ギガバイト 日本

B650E AORUS STEALTH ICE | マザーボード - GIGABYTE Japan

(2024/11/25)


前半

CPUクーラーを変えたい

2024春、弟から、「CPUの冷却性能を上げたい」と言われました。元々使用していたメーカーPC(OMEN 25L)は貧弱なCPUクーラーを搭載しているため、少し負荷をかけるとファンがうねるのです。

そこで選択したのが「Deepcool AK400」です。いわずと知れた新・定番、とりあえず載せておけばi7までは余裕で冷やせると評判の傑作クーラーです。ただし、一つだけ問題がありました。

問題発生(その1)

今のケースに入らない。

OMEN 25Lはかなりスリムな筐体であり、CPUクーラーは高さ130mmが限界、140mmファン搭載クーラーはもちろん、120mmでも(ベースを考えると)搭載できません。もちろん、92mmサイズのものもいくつか販売されていますが、元からの大幅な改善は見込めない...

こうなったら、ケースを買い換えるしかない。


ケースも変えよう

個人的に、PCのケースを変えるのはかなりおすすめです。中身が変わってなくても、見た目が変わると満足感が段違い、下手にCPUを変えるよりQOLが上がります。

それはともかく、弟がチョイスしたのは「MSI MAG PANO M100R PZ」。他にない斜めの強化ガラスが魅力的なピラーレスケースです。しかもARGBファンを4つ搭載(そのうちサイドの3つは逆回転!)しながら価格は16,980円(当時)。非常に優れたケースです。これで役者は揃いました。


構成変更一回目

数日後、ついに届いたパーツでPCの組み換えが始まります。OMENのケースは特殊構造。サイドパネルの開け方もわからず、グラフィックボードはケースにがっちりと固定され、ちもろぐさんの記事を見ながらもなんとか解体を完了...できませんでした。

よーしお兄ちゃん中身移植しちゃうぞ~


問題発生(その2)

Wi-Fiアンテナ、どうなってるんだ?自分の自作PCは外付けアンテナがあるけど、このPCってアンテナないよな...

メーカーPCはここまでの分解を想定されていません。なんとWi-Fiアンテナはケース本体に半田付け、本体がまるごとアンテナの役割を果たしていたのです。このままだとネットに繋げられない...(家の事情で有線は使用不可)


ケースに接続されてたWi-Fiの線を余ってたアンテナに無理やり固定(できてない)


問題発生(その3)

一旦考えるのを諦め、パーツ類を新ケースに移植していきます。とここでも問題発生。

マザーの端子類が独自規格でうまく刺せない...

フロントヘッダー端子を指す場所がない。いや、たぶん電源スイッチはこの端子なんだけど、それ以外が存在しない。このままだとひどい状態で接続することになる。

それだけではなく、ケースのUSB 3.1 Type-C用Type-Eコネクタを接続する場所がない、ARGBヘッダーがなくLEDが制御できない、ケースがデカすぎ(?)で電源ケーブルが届かない、など問題が噴出。そのすべてに目をつむり、一部は無理やり何とかすることで一旦完成させることに。

フロントヘッダー。どう考えてもこれではダメ


一応の完成。届かなかったPCIE補助電源は落ちてた延長ケーブルで接続。


後半

これはマザーを変えるしかない

ケースを変えて一ヶ月経たずして、弟からSOS。「やっぱりマザーも変えたい」...

まあ、これは仕方ない。Wi-FIアンテナを無理やり繋いでいたのでかろうじてネットは使えていたものの、とてもじゃないけどFPSは遊べない状況だった。今後ずっとこの状態で使うわけにもいかないし、早いところ変えるべきでした。

さて、どのマザーボードを選ぶべきか。外せない条件は以下の4つ。

・LGA1700(当然、Core i7 12700Kを流用)

・microATX (ケースの都合)

・DDR4 (使いまわしたい)

・Wi-Fi搭載(拡張カードでの増設はあまりしたくない)

この条件に合うマザーボードは26件。これに加えて、「黒がいいなぁ」「どうせならMSIで統一したいなぁ」「どうせなら裏配線対応マザーがいいなぁ」との要望。しかし、そんなものは市場に存在しません。

もともと、MSIのPZマザーは2つしか市販されておらず、そのうち1つはAMD用のため選択肢は「B760M PROJECT ZERO」のみ。しかしこいつはDDR5用だし、何より白い。となると次点でASUSが選択肢に浮上します。(裏配線>MSI)

(というか裏配線マザー、白色多すぎない?)

ASUSのBTF対応マザーは4つ。その中でMicroATXは2つ。DDR4となるとたった1つに絞られます。それが「ASUS TUF GAMING B760M-BTF WIFI D4」でした。こいつなら「MSI」以外の条件をすべて満たします。

ただし、ここで気になる問題が1つ。「Project Zero対応ケースにBTF対応マザーは入るのか?」

そもそも、これら裏配線規格はクローズドではなく、さまざまなケースメーカーが両対応製品を発売しています。しかし、ホストメーカーの製品となると話が違う。裏配線用の切り抜き位置が両社で異なっていたら?サードパーティーは両対応のため広めに穴をあけてるのでは?...

いや、写真を見た限りでは大丈夫。ここは賭けに出ようということで購入を決定。ついでに電源も注文し、再度の改造に備えます。

構成変更二回目


ほぼ全パーツ買ってないか?


パーツ類が揃いました。ついでに友達が余らせていたDeepcoolのARGBファンと、自分の部屋に落ちてたNoctuaのファンも使用します。グリスも落ちてたSMZ-01Rでいいでしょう。


~組立画像、無し~

出来上がったものがこちらです

公式の画像だと言い張れるレベル。ASUSとMSI混ざってる時点でありえないけど...


めちゃくちゃいいですね、自分のPCよりもかっこいいまである。裏配線なので見えてるケーブルがグラフィックボードの電源ケーブルしかないし、ピラーレスなので開放感がすごい。角が斜めになっているのも個性的でお気に入りです。AK400のファンをNoctua×2に変えて冷却性能も爆上がり...してると思います(未検証)。このファン結構うるさいのは難点ですが。

マザーボードも問題なく搭載できています。

左側面側から。PCIE補助電源ケーブル以外見えないのはすばらしい。

背面。これから組む人へ参考をば。

問題発生(その4)

でもやっぱり駄目な点もあります。Type-Eコネクタを繋げるとバックパネルが閉まらない。ケース側のコネクタがストレートなのが原因です。このせいでフロントType-Cが使えない。これってMSIのマザボなら大丈夫なのかな...?

この問題については目をつむることで解決しました。(ちゃんと解決するなら、その辺に売ってるL字コネクタを使えばいいと思います。)

でもこれ以外の不具合は発生せず、半年たった今でも安定稼働しています。よかったね。


かかった費用

クーラー 3,200円

ケース 16,980円

マザー 32,000円

電源 6,980円

ARGBファン コメダ珈琲をおごり

Noctua,グリス プライスレス

総額 だいたい6万円

体感性能 変化なし......................................................

うん、沼。 

自作PCは何故かお金がかかる。自分のメインPCも結局40~50万くらいかかってるんじゃないかな?それでいて大した性能じゃないし。

見た目にこだわるのは、富豪の遊びですね。それが楽しいんだけど...

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